温泉豆腐の授業
3年生も今日で通常授業は終了。最後に何をしようか考え、温泉豆腐を食べながら、化学のまとめをすることにしました。その様子を紹介してみます。
T.最後の授業になったね。予告どおり湯豆腐を食べようか。実験室が使えなかったか ら、準備が大変だった。昨日のうちに、ニュー三久(お店)で温泉に溶ける豆腐を買いに行って、滝亭までお湯をもらいに行った。滝亭は改装工事で1週間ほど休館中だったので、びっくりしたが、なんとかお湯をもらうことが出来た。このお湯の入れ物だけれど、ポリタンの中に前のお湯が残っていて、なにやら緑色のカビのような物が生えている。熱湯で洗い、とびきり濃いウォッカで洗ったら、緑色が出てきた。これってなんて言う?
S.抽出。
T.そう。抽出。緑色だから葉緑素がでたのかもしれないけど、毒がなくなるとは言えない。熱湯消毒してもカビ毒は分解されないかもしれないので、カビの生えたポリタンは使わないことにした。毒は熱してもだめだよ。今騒がれているメタミドボスも熱してもだめでしょ。
S.そういえば餃子は焼いたり煮たりするなあ。
T.日本酒の瓶より、焼酎のほうが、アルコール度数が高いので雑菌が繁殖しない。焼酎は日本酒のようなお酒を加熱して、アルコール濃度を高めたもの。だから焼酎の瓶でお湯をもらった。さて、豆腐は何で固めるんだっけ?
S.にがり。
T.にがりって何?
S.塩化マグネシウムかな?
T.そう。にがりの作り方は海水を煮詰めて、乾固させ最初に溶け出すものを取り出す。空気中の水分を吸って溶けるのをなんて言うんだっけ?
S.潮解性。
T.そう。煮詰めて最後に残る液体部分を集めてもいい。とっても苦いから、ニガリ。マグネシウムが+イオンだから、-コロイドの豆乳が固まる。豆乳って疎水?親水?どっちのコロイドだっけ?固まることをなんて言う?
S.親水かな。だから塩析ー!
T.OK。そのとおり。1価の陽イオンでは、固まらず、2価、3価ならMgでなくても、CaイオンでもAlイオンでも固まるんだったね。でもAlは食べられない。Mgは戦時中ジュラルミンや耐火煉瓦の材料になるため軍需物資として供出しなくてはならなくなり、豆腐に使えなくなった。そこで出てきたのが、硫酸カルシウム(せっこう)。でもこれって溶解度が小さい沈殿する組み合わせだよね。なぜこれで豆腐が固まるんだろう?これは、溶解度が小さくても溶けるので、Caイオンは出てくるんだ。この濃度で豆腐は固まるってことだ。硫酸カルシウムはじわじわ効くので、豆乳はゆっくり固まる。でも溶解度の大きい塩化マグネシウムは速効性なので固まりムラなどが出来やすくきれいな豆腐を作るのが難しい。職人技なんだ。さて、こうやって固まった豆腐が、<アルカリ性で、Ca、Mgイオンの少ないお湯>に溶けるのはなぜだろう?タンパク質はアルカリに溶ける性質があるけど、これはペプチド結合が切れることによる加水分解かな。この場合は加水分解というより、CaとNaが入れ替わることにより、凝固しなくなるんだと考えている。このメカニズムを確かめる方法をなんとか考えたいんだ。そろそろ溶けてきたから食べてみようか?お湯が真っ白に濁って来ただろ?各自お椀をもっておいで。この豆腐をすくうお玉はステンレスだけれど、ナベの中に入れっぱなしにしたら、いけない。なぜだと思う?
S.溶けるから。
T.どっちが?
S.お玉・・・いやなべかな?
T.そう。イオン化傾向の大きいアルミのナベの方が、ステンレスのお玉より溶けやすい。これってなべは正極?負極?
S.溶けるのは陽極だから正極かな?
T.それは電気分解の陽極だよ。今の場合は電池になるから負極だよ。どう?美味しいかな?
S.うん。美味しい。(評判はいいものの反応はまちまち)
T.じゃ食器やなべを洗って終わろうか?食べるっていうのは、実験以上に安全に気を遣う。今日の最後の授業で3年間の化学を振り返ってまとめてみたけど、まだまだすんなりと答えが出てこないね。それは実際の生活の場で使いながら考えることがあまりなかったからだろうけど、これから皆進学するわけで、研究の中で、しっかり学びながらオリジナルな世界を楽しみながら作っていってね。期待しています。3年間ご苦労様でした。
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