赤リンから黄リンをつくる
私が化学でよく扱う実験の一つに赤リンから黄リンをつくるというものがある。私の場合はガラス管の中に赤リンを少量押し込み、ガスバーナーで加熱して黄リンに変える。黄リンは空気中で自然発火するので、ガラス管の一方から強く吹くと、黄リンが燃焼しながら飛び出すというものだ。危険も伴うが、印象的なので必ず扱っている。昨年の8月の河合塾全統マーク模試(2009)にこれを扱った問題が出た。
問1.同素体に関する記述として正しいものを次の①~④のうちから一つ選べ。
①一酸化炭素と二酸化炭素は互いに同素体である。
②ダイヤモンドと黒鉛はいずれも電気を導かない。
③酸素に紫外線を照射するとオゾンが生成する。
④空気を絶って赤リンを加熱すると黄リンが生成する。
というものだ。生徒の中には当然、実験をよく覚えていて、自信を持って④を選択するものもいた。ところがここでは、④は不正解とされ、③が正解となっていたのである。③は酸素中で無声放電をするという方法もあり、紫外線はどうかな?と迷ってしまう。当然生徒は「実験見たのにー!」とか言ってきた。こういうのがあると、ただでさえ私の実験は怪しい?ので、実験なんかみないほうがいいという意識を植え付けてしまうことになりかねず、とても困ってしまうのだ。ところが、雑誌『理科教室』2010.1月号に岩手の佐藤琢夫さん(私と同じアルケミストの会のメンバー)が、このことについて<河合塾に問い合わせて④も正解であることを確認した。>ということを書かれており、とても嬉しかった。早速生徒達にも知らせて回ったが、センター試験でも、実験を巡ってこの種のことが時々起きる。こういうときにはアルケのメンバーは直接センターに問い合わせたりして、実に頼もしい。昨年末にも、冬休みの補習で生徒から出された気体の製法の問題を安房塾で何人かの人に考えてもらい、「すっきりしないのが自分だけではない」ことを確認できて嬉しかった。<人間一人になるとろくなことはない>ことを確認できた貴重な出来事であった。佐藤さん、ありがとうございました。
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コメント
昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願いします。(喪中はがきをいただいたので、年賀状出しませんでした、すみません)
記事の模試の問題ですが、とりあえず3, 4に絞り込めますが、私なら答えは3にします。
というのも、3は間違いなく正解(オゾン層の成因から)ですが、4は”ちょっと怪しい”からです。
それに、黄リンを赤リンから作るとすると、一旦リンの蒸気を作って「冷却」する必要がありますし(多分)、問題文の『空気を絶って加熱する』という記述は、むしろ逆の黄リンから赤リンを作る方のことを出題者は念頭に置いていたのかな、という気がします。
実際に実験で黄リンを作ったことはないので、理化学辞典等による俄か仕込みの知識で書きました。間違ってたら済みません・・・。
投稿: 伊田 | 2010年1月 7日 (木) 07時13分
伊田君、こちらこそ昨年はお世話になりました。お陰様で無事、12月23日の発表を無事終えることが出来ました。今年もよろしくお願いいたします。黄リンを空気を絶って250℃で加熱すると赤リンになるというのは教科書にも記載があります。やっかいなのは、同素体の興味深い?実験として、私(他色々な先生)が授業で、赤リンから黄リンの実験を扱っているおり、そういう事実がある点なのです。またコメントを下さい。では。
投稿: 管理人 | 2010年1月 7日 (木) 08時48分
すみません、私の書き方が不正確でした。
問題文の
「4. 空気を絶って赤リンを加熱すると黄リンが生成する。」はやはり誤りだろう、というのが私の解釈です。
赤リンを一旦リンの蒸気にし、それから(液相を経るかどうか分かりませんが)固体の黄リンを得るというのが製法のようですし、冷却について書かれていない問題文は再現性の意味で不十分です。単純に加熱してできるワケではなさそうなので。
紛れが無い出題としては、「空気を絶って赤リンを250℃で加熱すると黄リンが生成する」、とすれば良かったのかもしれませんね。
投稿: 伊田 | 2010年1月 7日 (木) 15時37分