宮沢賢治 サイエンスファンタジーの世界 その2
少し前のことで、恐縮ですが、4月16日、ワクナミトネリコで<宮沢賢治 サイエンスファンタジーの世界 その2>をやりました。テーマは、<賢治と銀、白金そして水銀のサイエンス>です。賢治の作品にはこの3つの金属とそのサイエンスがたくさん出てきます。
例えば
【銀】〔小岩井農場より〕
ひばり ひばり
銀の微塵のちらばるそらへ
たったいまのぼったひばりなのだ
くろくてすばやくてきんいろだ
そらでやるBrownian movement(ブラウン運動のこと)
【白金】〔丸善階上喫煙室小景より〕
マッチがみんな爆発して
人はあわてて白金製の指輪をはめて手をこする
・・・その白金が大爆発の原因ですよ・・・
【水銀】〔雲とはんのきより〕
精製された水銀の川です
アマルガムにさえならなかったら
銀の水車でもまわしていい
等等・・・
といった具合です。
講座では、銀の微塵の美しさ、白金触媒の面白さ、その銀も白金も溶かし込んでしまう(アマルガムをつくる)水銀の不思議を実物と実験で体験して頂きました。水銀は持っただけで感動の重さですし、これに銀箔や金箔はあっというまに溶けてしまいます。白金と銀は、並べてみると白い方が銀で、ここから驚きが始まり、銀は硫黄と反応して一瞬でさび、白金は水素を吹きかけると水素のちょっとした爆発を起こします。賢治はこれらのことをすべて知り、授業などでも生徒達と楽しんでいたようです。そして作品にもその世界を描き込んでいるのです。これらの実験を追体験していると「世のちっぽけなことは置いといて一緒に楽しもうよ」そんなメッセージが感じ取れる様な気がします。この回は,白金の事が描かれた【丸善階上喫煙室小景】と【あそこの田はねぇ】を素材に賢治の教育観についても考えて見ました。この二つの作品には、当時の学生が勤しんでいたくだらない(と賢治が考える)学問と賢治の考える本当の学問が、次のように、独特の表現で描かれています。
【丸善階上喫煙室小景より】
・・・・・・・・・
なるほどなるほどかう云ふわけだ
二十世紀の日本では
学校といふ特殊な機関がたくさんあって
その高級な種類のなかの青年たちは
あんまりじぶんの勉強が
永くかかってどうやら
若さもなくなりさうで
とてもこらえてゐられないので
大てい椿か鰯の油を頭につける
そして充分女や酒や登山のことを考へたうヘ
ドイツ或は英語の本も読まねばならぬ
それがあすこの壁に残って次の世紀へ送られる
・・・・・・・
ネット検索でも全文を見ることができますので、興味のある方はご覧下さい。第3回は5月11日(水曜)14:00~ワクナミトネリコです。テーマは<賢治と光・音・香のサイエンス>です。参加して頂いている皆さんのおかげで、私自身が一番ワクワクする講座になっています。参加を希望される方は、
ワクナミトネリコ(080-4663-9348)
または私(shecow1@hotmail.com)までご一報下さい。
| 固定リンク | 0
コメント