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2020年10月24日 (土)

宮沢賢治と燐光


「原子の輪廻」と共に、賢治の世界を支えているものの一つに「光の輪廻」があります。「銀河鉄道の夜」には光という言葉が100か所以上出てきます。その中でも特別な意味を持っているように思えるのが燐光です。燐光は光のエネルギーを蓄えてゆっくり放出するもので、紫外線を当てた後、しばらくたってもぼーっと光ります。紫外線を当てている時だけ光るのは蛍光です。ところが燐光にはもうひとつ意味が込められていて、賢治は燐光の青い光を、死の世界=来世の光としても描いているようです。燐が燃える火は、暗闇でほのかに青く光ります。
『青い星のような光がそこらいちめんに見えた。「これが死んだしるしだ。死ぬとき見る火だ。熊ども、ゆるせよ」と小十郎は思った。(「なめとこ山の熊」)』
『これがよだかの最後でした。それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。(「よだかの星」)』
この燐の火を撮影したくなりました。赤燐を加熱すると黄燐に変化し、黄燐は空気と反応して自然発火するのですが、この時に光を放つのです。ただし有毒ガスがでるので、ガラス管に赤燐を封入して真夜中に台所で実験してみました。赤燐も黄燐も、ブラックライトの光を蓄える意味での燐光は放ちませんでしたが、黄燐が燃える炎をなんとか撮影できました。しかし迫力不足ですね。そこで、夕方から学校の実験室に出向き、燐が燃焼するときの様子を撮影しました。あれこれ試行錯誤したのですが、部活中の科学部員達が一緒に方法を考えてくれました。部長の小林君が「試験管の中に赤燐を入れてバーナーで加熱して黄燐にして発火させたらどうですか?」という意見を出してくれ、その方法でやってみたらとてもきれいな写真と動画が撮れました。これで賢治の描く燐光のイメージが少しは浮かぶでしょうか?暗くなるまで学校にいたのは久々で、懐かしい感覚でした。フェイスブック「宮沢賢治と科学実験」ではこの動画を紹介していますので、興味のある方はぜひ、そちらをご覧ください。
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