「わたしの宮沢賢治」(毛利衛)と「生徒諸君に寄せる」(宮沢賢治)
宇宙飛行士の毛利衛さんの著書に「わたしの宮沢賢治」というのがあります。その「はじめに」に毛利さんが賢治の「生徒諸君に寄せる」の一節「新しい時代のコペルニクスよ ・・・」という部分を書き写して宇宙船に持ち込み、コックピットから広がる情景に「賢治は既にこの光景をみていたのではないか」と思うほど感嘆したことが書かれていました。賢治の想像力の素晴らしさを感じさせられます。このあたりを「銀河鉄道の夜」講座で紹介するようになったのですが、「生徒諸君に寄せる」には次のような一節もあります。「新しい時代のダーヴィンよ… 銀河系空間の外にも至り 透明に深く正しい地史と 増訂された生物学をわれらに示せ」。三葉虫の化石を手に「銀河鉄道の夜」の発掘シーンを紹介する場面が講座にはあるのですが、ここではこの一節が合いそうです。ダーウィンの「種の起源」が書かれたのは1859年、日本での翻訳は1896年で、なんと賢治の生まれた年です。たくさんのものを学んでいた賢治をここでも実感できました。これも講座に加えてみます。
毛利さんが、たくさんのことを賢治から学び、共感し、賢治から励まされていることが伝わってくる本です。
3億5千万年前の三葉虫の化石を手に「君は何歳、この三葉虫とどっちが長生き?」と聞いています。「おや、変なものがあるよ。」カムパネルラが、‥くるみの実のようなものをひろいました。…「標本にするんですか」「いや証明するに要るんだ」のシーンは、人間のたどってきた道筋を解き明かすことが書かれているように思えます。「生徒諸君に寄せる」の「新しい時代のダーウィンよ」という賢治の言葉はそれを支えてくれるように思えました。
| 固定リンク | 0
コメント